訪日客の増加で、日本の飲食店を利用する外国人も急増中。
外国語での接客やメニューの作成など、
対応に追われているところも多いのではないでしょうか。
英語圏や中華圏のお客様をはじめ、近年急増しているのが
ムスリム(イスラム教徒の人々)です。
イスラム圏というと中東諸国をイメージする人も多いかもしれませんが、
現在、ムスリムが最も多く暮らしている国はインドネシアで
パキスタンやインド、バングラディシュといったアジア地域や
アルジェリアやエジプトなどの北アフリカも含まれます。

ハラールという言葉の意味は?
ムスリムにとって、宗教と密接なつながりをもつ「食事」は
戒律に忠実に従う信仰そのものといわれますが、
基本となっているのは、健康的で清潔、安全、高品質、
高栄養価のものを食べること、それが「ハラール」なのです。
もちろん、イスラム法によって「合法」と認められたもの
「許されたもの」というのが大前提ですが、
清潔で健康によいものを食べるという点では、
「ハラール」はムスリムだけが口にする特別な食べ物、
という意味だけでなく、一般的にも親しみやすい考え方ですね。
ただ、宗教上の理由で食べることを禁じられている食材もあり、
ムスリムが口にできない料理もあります。
具体的にどんな食材がNGなのか見てみましょう。

「ハラール」と「ハラーム」、その違いとは?
ハラール:HALAL
イスラム法で合法と認められたもの
野菜や穀類、一部の魚、また、バクテリアの繁殖を防ぎ
鮮度を保ち清潔に肉を食べるというイスラムの教えにもとづいて
血抜きされた鶏肉や牛肉、羊肉などがハラールとして認められます。
ハラーム:HARAM
イスラム法で非合法なもの。
ハラールでないもの、という意味で「非ハラール」という言い方をすることも。
豚肉やアルコール類は禁じられています。
だしやスープ、調味料として豚肉、豚脂、ゼラチン、お酒を使うこともできません。
日本の飲食店で、ハラール認証は必要?
2020年、東京オリンピック開催にむけて、ますます訪日客は増加傾向。
東南アジアをはじめとするムスリムのお客様が安心して食事が楽しめる
環境の整った飲食店があれば、需要も増えそうです。
NPO法人日本ハラール協会では、ハラール認証の申請を受け付けています。
ハラールレストラン認証の基準
- ムスリムのオーナーまたはシェフによって調理を行う
- 提供する料理の食材や調味料はすべてハラールなものを使用する
- アルコール類の販売がなく、ハラール性が確認されたソフトドリンクのみを提供する

ハラールは食材に限ったものではなく、衛生管理基準をはじめ
インテリアやスタッフの服装などの身だしなみ、
店の運営資金にいたるまで、ルールが徹底されています。
日本の一般的な飲食店で申請を行うには、
ハラールとしての基準をクリアしているか、調査にかかる時間や、
環境を整えるためのコスト面なども含めかなりハードルが高いといえます。
ハラール認証を受けるまでには至らなくても
ハラールキッチンとしての認証やハラール対応レストランとして
推薦状を受け取ることも可能です。
ハラールキッチン認証の基準
- 提供する料理の食材や調味料はすべてハラールなのものを使用する
- ムスリムによる調理は必須ではないが、ムスリムの雇用が望ましい
- アルコールの販売を行っている場合、ムスリムには個室の提供が望ましい
- アルコールドリンクに使用するグラスとそれ以外のグラスは区別し、洗浄方法も区別する
ハラール対応レストラン(推薦状の発行を受けられるレストラン)の基準
- ムスリムへの食事提供について知識をもつ調理人によって、ルールが守られている料理を提供する
- 提供する料理の食材や調味料はすべてハラールなものを使用する
- アルコールドリンクに使用するグラスとそれ以外のグラスを区別する
- ムスリムが雇用されていることが望ましく、食材等について情報開示は誠実に行う

推薦状の発行を受けるためには、内閣府が認定する「調理師」資格をもち、
「ハラール調理師講習」を終了した調理師が在籍していることも必要です。
以上のような基準をクリアすることで、ムスリムフレンドリーな飲食店として、
多様化する外国人のニーズに対応しながら
さらなるビジネスの可能性を広げてみてはいかがでしょうか。
最後に
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翻訳監修
セス ジャレット:Seth Jarrett
カナダ出身。翻訳会社のアイ・ディー・エー株式会社に13年以上在籍。翻訳者のクオリティーチェックから英語のリライトまで幅広く対応。自らパンやスイーツをつくる料理人でもある。