オーバーツーリズムとは?事例や対策について解説!

インバウンド需要・観光が増加し続ける日本では、インバウンドによる経済が回復する一方で「オーバーツーリズム」という“観光弊害”も問題となっています。 

 インバウンド事業に携わる事業者の中には、オーバーツーリズム問題について対策、対応したいと考えている方もいるのではないでしょうか。 

この記事では、「オーバーツーリズムについて」事例や対策について紹介します。 

オーバーツーリズムとは 

オーバーツーリズムとは、日本語で「観光弊害」とも呼ばれ、観光客の増加・集中により、「過度の混雑」や「マナー違反」による「地域住民への影響」や、「旅行者の満足度の低下」など、さまざまな問題が生じてしまう状態のことをいいます。 

【参考】オーバーツーリズムの未然防止・抑制に向けた取組|観光庁 

オーバーツーリズムの事例 

オーバーツーリズムは、訪日観光客を受け入れる側からみた問題に注目してしまいがちですが、観光客側からみた問題についても、オーバーツーリズムが影響しています。 

オーバーツーリズムによって事業者や地域住民などが受ける影響

  • 混雑問題 

観光客の増加・集中により、一部の観光地や飲食店などが「過度の混雑」状況に陥り、さまざまな問題が併発してしまうこともあります。 

事業者や地域住民が過度の混雑によって受ける影響としては、混雑に関連するクレームや交通網の渋滞などが挙げられ、特に、公共交通機関の混雑により、通勤・通学者に支障が出ることや、道路の混雑により救急車両が動けなくなることなどが大きな問題です。 

  •  ゴミ問題(マナー問題) 

観光客が多く訪れる観光地であっても、場所によっては「テロ対策」などによりゴミ箱が設置されていないことも少なくありません。 

そのため、「ポイ捨て」「不法投棄」されたゴミなどによる、ゴミ問題が深刻化している地域もあります。 

ゴミ問題は衛生的な問題だけでなく、景観を損ねるなど、さまざまな問題が発生します。 

  • 騒音問題(マナー問題) 

観光客(人)が増えることにより、必然的に騒音問題も発生しやすくなり、特に、深夜の「大声での会話」などは、地域住民の生活にも大きな影響を与えてしまいます。 

  •  そのほかのマナー問題 

そのほかのマナー問題としては、「写真映え」するスポットへの集中による営業妨害や、文化財の損傷、無断駐車など、さまざまな問題が生じています。 

オーバーツーリズムによって訪日観光客が受ける影響 

  • 旅行の満足度低下 

上記で挙げた「事業者や地域住民などが受ける影響」は、視点を変えた場合、旅行者への影響にもつながります。 

過度な混雑、ゴミ、騒音、そのほかのマナー問題はすべて「日本(旅先)の魅力の低下」につながり「せっかく日本に来たのに残念だ」と、旅行の満足度が低下してしまいます。 

オーバーツーリズムに対する理解 

もちろん、すべての訪日観光客が上記で挙げたオーバーツーリズム問題を引き起こしている訳ではありません、仕方なく発生してしまう混雑や、文化などの違いもあるでしょう。 

日本の文化やマナーを理解し、適応しながら観光を楽しんでいる訪日観光客ももちろんいます。 

オーバーツーリズムは、場合によって「地域住民の生活に支障をきたす」など、深刻な問題ではありますが、一方的に非難するのではなく、「観光客」と「事業者・地域住民」の相互理解を前提としたうえで、問題解決に取り組むことが大切です。 

オーバーツーリズムの対策・対応 

オーバーツーリズム問題に対する対策・対応例では、すでに観光庁(観光立国推進閣僚会議決定)で「オーバーツーリズムの未然防止・抑制に向けた対策パッケージ」がとりまとめられています。また、オーバーツーリズム問題は、日本以外の国においても深刻な問題です。 

海外の対策・対応例についても紹介します。 

日本の対策・対応 

過度の混雑やマナー違反における対応 

  • 交通チケット購入や、運賃支払いのキャッシュレス・多言語化を支援 
  • 観光客が集中する交通網の、バスから電車への分散・乗り換えを促進 
  • 国立公園を中心に入域料を導入し、環境整備に活用 
  • 富士山での適正な入山管理、軽装登山、ごみ投棄等について協議を開始 
  • 観光スポットや周辺エリアの混雑状況の可視化・リアルタイム配信の導入支援 
  • 文化財や美術館・博物館等を早朝・夜間に体験する特別プログラムの実施 

など

地方部への誘客の推進 

  • 全国各地で特別な体験や期間限定の取組等を自然、文化、食、スポーツ等のさまざまな分野で創出し、全世界に発信 

地域住民と協働した観光振興 

  • 住民を含めた地域の関係者による協議に基づく計画策定・取組実施への包括的な支援を全国約20地域で実施し先駆モデルを創出 
  • 各地域における課題解決にかかる相談窓口を観光庁に直ちに設置し、各省庁が連携して支援する体制を整備。 

など 

【参考】オーバーツーリズムの未然防止・抑制に向けた対策パッケージ|観光庁 

海外の対策・対応 

イタリア 

ベネチア市では、観光繁忙期の過度の混雑の予防・対応策として、市内に入る観光客から「入市税」を徴収する制度が(一定期間を対象に)導入されました。 

徴収対象者は、非ベネチア市民で午前8時から午後4時までに訪れる日帰り観光客で、徴収税は5ユーロです。 

また、入市税を支払わない者に対しては、50〜300ユーロの罰金が科されるといいます。 

ローマ市では、条例改正により「歴史的建造物に座ることや飲食すること等」が禁止されており、「トレビの泉」のへりの岩に座ることや、泉の中に手を入れること、キャスター付きスーツケースを転がすことなどが厳しく取り締られています。 

違反した場合の罰金は、最大400ユーロです。 

フランス 

フランスにおいても、一部の地域においてオーバーツーリズム対策が施されており、ブルターニュのブレハ島では、(一定条件、期間において)1日の訪問者数の上限を4,700人に制限されています。 

また、マルセイユのカランク国立公園では、「スギトンの入り江」への1日の訪問者数の上限を、わずか400人に制限する予約システムが導入されました。 

オーバーツーリズム対策に多言語対応は必須 

オーバーツーリズム対策には、場所や状況によってさまざまな対策・対応が必要であり、各対応・対策に合わせ、多言語対応も必須となるでしょう。 

オーバーツーリズム対策の多言語対応とは 

オーバーツーリズム対策を講じる際、訪日観光客にマナーや注意事項など「何かを伝える」ためには多言語対応(表示)が必要です。 

多くの観光地などでは、すでに多言語対応が講じられていますが、多言語対応が不十分であるために、意思疎通が図れず、問題やトラブルが生じてしますこともあります。 

訪日観光客とのトラブルや問題を予防し、快適に観光を楽しんでもらうためにも、多言語対応はしっかりと行いましょう。 

オーバーツーリズム対策には翻訳会社を活用しよう 

「重要事項」や「細かなニュアンス」は、正確に伝える必要があり、機械翻訳だけでは不十分な場合もあります。 

オーバーツーリズム対策に必要な翻訳は、ネイティブによるプロの翻訳会社を活用しましょう。 

まとめ 

インバウンド需要は今後も、さらに増加傾向であるとみられており、インバウンドが増加することによってプラスになることももちろんありますが、紹介した問題のようにマイナスなことが起きる場合もあります。 

適切なインバウンド・オーバーツーリズム対策を行い、インバウンド需要に対応しましょう。 

 

 

 

 

ABOUTこの記事をかいた人

翻訳監修

セス ジャレット:Seth Jarrett

カナダ出身。翻訳会社のアイ・ディー・エー株式会社に13年以上在籍。翻訳者のクオリティーチェックから英語のリライトまで幅広く対応。自らパンやスイーツをつくる料理人でもある。