日本では近年、外国人労働者の数が増加しています。
令和3年現在、外国人労働者数は過去最高を更新しており、今後も増加することが予想されます。
労働者が多い国は1位ベトナム、2位中国、3位フィリピンです。
就業規則やその他の社内規定の翻訳は英語版だけでは不十分といえるでしょう。
企業側と、労働者側の両方が安心して働くことのできる環境を整えるために必要な就業規則や社内規定の翻訳について説明します。
参考:「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和3年10月末現在)
就業規則とは
就業規則とは、労働者と雇用者との間での取り決めを定めた規則です。
労働時間や休日、賃金の支払いなどを定めているだけでなく、トラブルを防止する役割も果たしています。
就業規則の翻訳が重要な理由
就業規則を翻訳すべき主な理由として
- 外国人労働者の増加
- 外国人労働者とのトラブル回避
- 労働条件に対する理解
の3点が挙げられます。
外国人労働者の増加
先述のとおり、外国人労働者は令和3年現在、過去最高の人数となっています。
今後もさまざまな職種で外国人労働者が増加していくことが予想されるため、就業規則について、理解しやすい環境を整えておくことが必要となります。
外国人労働者とのトラブル回避
日本語を流暢に話す外国人労働者であっても、難しい言葉で書かれている就業規則を読み解くことは困難です。
日本語がほとんど話せない外国人労働者にとっては就業規則を渡されていたとしても内容を理解できず、取り決めの意味を果たしません。
取り決めを正しく理解してもらい、働くうえでのルールを把握してもらうことは、労働者と雇用者の間でのトラブルを回避することにつながります。
労働条件に対する理解を深める
労働条件に労働者と雇用者が共通の認識を持っておくことは重要です。
特に賃金などは、一番トラブルになる項目です。
通知していたとしても外国人労働者が間違った認識をしている場合や、曖昧な理解になっている場合には不満の原因となり、後に大きな問題につながることがあります。
理解を深められるよう、就業規則は最低限、英語には翻訳されているべきでしょう。
就業規則の翻訳だけでは不十分?
就業規則のほかにも、社内の取り決めは多数存在します。
これらの社内規定には
- 雇用契約書/労使協定書
- 給与規定/賃金規定
- 賞与規定
- ソーシャルメディア利用規定
- 育児休業規定/介護休業規定
- 個人情報管理規定
などが含まれています。
これらの規定書類も併せて翻訳、準備しておくと良いでしょう。
雇用契約書・労使協定書の翻訳
雇用契約書や労使協定書は賃金や労働時間、就業場所や休日などの労働の条件を労働者と使用者の双方で確認したうえで取り交わす書類です。
就業規則が雇用主と労働者の間で統一して取り決められたものであるのに対し、雇用契約書や労使協定書は一人ひとりと結ぶルールとなります。
労働基準法では労働者に労働条件を明示することが義務とされているため、使用者である企業側は外国人労働者に労働条件を明示するためにも翻訳が必要となります。
研修動画の翻訳
労働者の研修に動画を導入している企業も多いのではないでしょうか。
研修動画を作成しておくと、何度も研修をおこなう手間が省けるため効率よく研修が進められるのでおすすめです。
ただし、研修動画においても、日本語の動画を流すだけでは日本語を流暢には話すことのできない外国人労働者にとっては研修の意味を成しません。
少なくとも英語には翻訳しておく必要があります。そして、できる限り各労働者の母国語への翻訳を付けておくことをおすすめします。
就業規則や社内規定を翻訳・作成するときのポイント
就業規則やその他の社内規定について、翻訳・作成するときのポイントを説明します。
外国人労働者と共通の認識をもって働くための工夫をしましょう。
わかりやすい表現・文章にする
日本の就業規則や社内規定には、難解な法律用語などが含まれていることがしばしばあります。
日本人のなかには暗黙の了解でわかりづらい文書をそのまま使っていることがありますが、外国人労働者には通用しません。
「これくらいならわかるだろう」という考えは捨てて、できる限りわかりやすく、誤解が生まれない文章で翻訳をおこないましょう。
文化的背景の違いを意識して作成する
日本人であれば「常識」と考え、わざわざ規定に記載しない事柄でも、文化的な背景の違いにより、当たり前ではない場合があります。
外国人労働者にも共通認識として、日本の「常識」とされている働き方を知ってもらうためには、社内規定のなかでも言語化して反映させておく必要があります。
就業規則や社内規定は英訳だけではダメ?
外国人労働者に就業規則や社内規定を理解してもらうために、英語で翻訳しておくことは最低限必要なことです。
さらに正しく、深く理解してもらうためには各労働者の母国語で作成する方がよいでしょう。
就業規則や社内規定はルールを定めるものであるため、堅苦しく、難しい文章になることが多い重要な書類です。
だからこそ、誤解が生まれないように各労働者の母国語にしておくことで正しい理解が進み、トラブルの防止に役立つでしょう。
就業規則や社内規定の翻訳は翻訳会社に任せよう
就業規則や社内規定は法律に関わる重要な文書です。
たとえ翻訳の能力が高かったとしても、法律に関する知識や業界の知識が乏しければ、外国人労働者にとって理解しがたい文書になってしまう恐れがあります。
また、労働者と使用者の相互に共通の理解がなければ規定は効力を失ってしまいます。
作成する就業規則や社内規定が法的にも効力を発揮するよう、プロに翻訳を依頼することをおすすめします。
まとめ
就業規則や社内規定の翻訳について気を付けたいポイントを説明しました。
今後も外国人労働者は増加することが予想されます。
労働者と使用者がお互いにトラブルなく働ける環境づくりのためにも、就業規則や社内規定は各労働者の母国語で準備しておくことが最も好ましいでしょう。
翻訳監修
セス ジャレット:Seth Jarrett
カナダ出身。翻訳会社のアイ・ディー・エー株式会社に13年以上在籍。翻訳者のクオリティーチェックから英語のリライトまで幅広く対応。自らパンやスイーツをつくる料理人でもある。