海外を視野に入れた事業展開を行う企業が増える中、翻訳はさまざまな場面で必要とされています。
近年では、単なる翻訳ではなく、より現地のターゲットに響くような言葉で伝えるために「トランスクリエーション」による翻訳手法を用いたマーケティング戦略が注目されています。
グローバル展開を目指す企業に有効な翻訳手法である「トランスクリエーション」について解説します。
トランスクリエーションとは?

トランスクリエーション(transcreation)とは、翻訳の種類をあらわす造語であり、翻訳(translation)と創造(creation)を組み合わせた言葉です。
翻訳の世界では、原文の言葉がもつ意味を正確に訳すことが最重視されますが、トランスクリエーションでは、原文の言葉の意味から大きく離れない範囲内で、意訳を加え、より伝わりやすい言葉に置き換えます。
言語には、それぞれの国がもつ文化や習慣、概念など、複数の要素が反映されるため、正確さを重視した直訳だけでは、十分に意味や感情が伝わらない場合があります。
そのため、より言葉のもつインパクトが重要視されるようなビジネスの場面では、トランスクリエーションによる翻訳方法が、状況に応じて用いられています。
超訳・マーケティング翻訳とも呼ばれる
トランスクリエーションは、ただ言葉の意味を訳す翻訳ではなく、「伝わりやすさ」を重視した翻訳であることから、「超訳」、「マーケティング翻訳」といわれることもあります。
「超訳」とは、意訳の一種ですが、読み手に対する伝わりやすさを最優先した翻訳方法であり、原文本来の意味よりも、文脈や状況、読み手に合わせた言葉に置き換えられ、比較的大胆な意訳とも捉えられます。
また、トランスクリエーションは、コピーライティングで用いられることも多く、マーケティング分野で使用されることから、マーケティング翻訳と呼ばれることもあります。
マーケティング分野におけるトランスクリエーションでは、高い語学力をもち、正確な翻訳ができるだけでなく、現地のニーズや文化的背景、マーケティング知識が必要とされます。
翻訳との違い
トランスクリエーションは、翻訳(直訳)と異なり、ターゲットとなる国の文化的背景やマーケティング情報に加え、言葉のインパクトやバランスなど、あらゆる要素を組み合わせながら言葉を生み出す力が必要です。
翻訳(直訳)は、シンプルな言葉の置き換えだとすると、トランスクリエーションは、翻訳(直訳)だけでは機能しない言葉の力を補う役割を果たしています。
事実や根拠など、正確さが重視される場面では翻訳(直訳)を、マーケティングなど、言葉のもつ意味をより伝わりやすく、インパクトを与えたい場面ではトランスクリエーションを用いるなど、翻訳の手法は状況によって使い分けられています。
ローカリゼーションとの違い
ローカリゼーションとは、製品やサービスを、ターゲットとなる国の文化や習慣、流行に合わせて翻訳することをいいます。
国によって常識や価値観は異なり、場合によってはシンプルな翻訳だけでは意味が通じないことがあります。
対象となる国や地域で、より自然な言葉として伝わるようにするため、ローカリゼーションはさまざまな場面で用いられており、日本のアニメやゲームが海外版に翻訳される時なども、ローカリゼーションによる翻訳が用いられています。
トランスクリエーションは、対象となるターゲットに合わせた翻訳という点では、ローカリゼーションに近い部分もあります。
しかしローカリゼーションでは、「違和感のないように伝わりやすくする」ことが重視されている点に対し、トランスクリエーションでは、「ターゲット層に響きやすいように伝わりやすくする」ことが重視されており、より、マーケティング要素が強いことが特徴です。
トランスクリエーションが重要な分野

トランスクリエーションは、さまざまな分野で必要とされますが、中には向いていない分野もあります。
伝わりやすさやインパクトよりも正確性が重視されるような、医療や法律関係、ニュースやマニュアルなどに関する翻訳には、トランスクリエーションは不向きであり、原文に忠実な翻訳が求められます。
トランスクリエーションが最も重視されている分野は、マーケティング分野です。
近年は、海外も視野に入れた事業展開を行う企業も増えており、正確かつターゲットに沿った翻訳が必要となる機会が増えています。
具体的には、商品やサービスのポスター、パンフレット、パッケージや企業紹介WEBサイト、WEB広告内のキャッチコピーやプレゼンテーション用資料など、さまざまな場面で必要とされています。
トランスクリエーションのメリット

トランスクリエーションには、シンプルな翻訳(直訳)だけでは伝えきれない商品やサービスの良さを訴求できる特性をもっています。
トランスクリエーションの特性やメリットを活かし、今後さらなる発展が予想されるグローバル社会に対応できる事業展開を行うことができます。
現地の言語・環境に最適な表現で訴求できる
現地のネイティブに、なじみのある言葉や表現を用いることで、よりターゲット層に響く文章やキャッチコピーで、商品やサービスを訴求できます。
商品やサービスの魅力を、言葉や文化の壁を乗り越え、最大限に伝えるために、トランスクリエーションは必要不可欠な手段といえるでしょう。
ブランディング
多くの企業では、競合他社との差別化を図るため、自社ブランドにしかない価値を伝える工夫をしなければなりません。
言葉や文化の壁を超えて、自社ブランドの魅力を伝えるには、現地のネイティブがもつ価値観や文化的背景を理解したうえで伝えていく必要があります。
そのようなブランディング面においても、トランスクリエーションは有効的な手段となり、国を超えたブランディングが可能となります。
トランスクリエーションは翻訳会社に依頼しよう

トランスクリエーションは、ターゲット層の文化的背景や感情を汲み取る力や、マーケティング力が必要となるため、機械ではなく人間にしかできない作業です。
トランスクリエーションを取り入れたマーケティング戦略を行う際は、翻訳会社を活用しましょう。
高い語学力および翻訳力と、専門知識をもったネイティブに依頼することで、ブランドイメージや、商品・サービスの魅力を損なうことなく、マーケティングに有効な文章を作成できます。
まとめ
トランスクリエーションは、マーケティング分野で重視されている翻訳手法です。
言語や文化の壁を超えたマーケティングを行うためには、シンプルな翻訳(直訳)だけでは機能せず、それぞれの国のもつ文化や風習など、さまざまな要素を考慮したうえで翻訳する必要があります。
トランスクリエーションを用いることで、ターゲット層に響く現地の言葉で、商品やサービスを訴求できます。
トランスクリエーションは、人にしかできない作業です。
翻訳会社に依頼し、プロの翻訳者によるトランスクリエーションを活用しましょう。
翻訳を依頼するなら、多⾔語翻訳と制作で25年以上の実績があるアイ・ディー・エー株式会社がおすすめです。
翻訳言語のネイティブによる翻訳は、80以上の言語と幅広い専門分野に対応しており、翻訳サービスの品質とプロセス管理の国際規格ISO 17100認証を取得しています。
また、翻訳からウェブサイト/印刷物の制作までを⾃社内で⾏うワンストップ体制のため、短納期と低コストを実現しています。
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翻訳監修
セス ジャレット:Seth Jarrett
カナダ出身。翻訳会社のアイ・ディー・エー株式会社に13年以上在籍。翻訳者のクオリティーチェックから英語のリライトまで幅広く対応。自らパンやスイーツをつくる料理人でもある。