「英語には敬語がない」と聞いたことはありませんか?
日本語のように複雑な敬語表現がないため、英語=敬語がないと思われることが多いですが、実はそれは間違いです。
ビジネスシーンなどの場面では日本語の敬語にあたるような丁寧な表現が求められます。
今回は、英語に翻訳する際の敬語や丁寧語の表現について説明します。
英語にも敬語・丁寧語はある?
英語でも敬語・丁寧語にあたる表現を使う場面があります。
実際にどのような表現の仕方があるのかみていきましょう。
英語にも敬語・丁寧語にあたる表現はある
日本語では敬語は大きく3つ、丁寧語、尊敬語、謙譲語に分かれています。
2007年に出された「敬語の指針」ではさらに細かく5つに分類されています。
一方、英語には日本語ほど敬語の種類は多くなく、敬語・丁寧語の定義はありません。
しかし、敬語や丁寧語にあたる表現があります。
ビジネスシーンなどでは丁寧な表現が好ましく、実際には多用されています。
日本語の敬語・丁寧語との違い
日本語の場合、敬語は動詞が変化します。
例)
動詞 | 丁寧語 | 尊敬語 | 謙譲語 |
いる | います | いらっしゃる | おる |
言う | 言います | おっしゃる | 申し上げる |
一方、英語の場合は敬語や丁寧語といった概念はないため、動詞は変化しません。
その代わりに、助動詞を使って丁寧さを表現します。
例)
Will you pass me the document? (その資料を取ってもらえますか?)
↓
Would you pass me the document? (その資料を取っていただけますでしょうか?)
英語における敬語・丁寧語の度合い
日本語にも丁寧語、尊敬語と使い分けがあるように、英語における丁寧な表現にも度合いがあります。
日本語でも、敬語が使い分けられない人があまりスマートに見られないのと同様に、英語でもそのシーンに適切な表現が使えない場合にはスマートさに欠けてしまいます。
使うシーンによって適切な度合いの丁寧な表現を使い分けましょう。
敬語・丁寧語にはレベルがある
英語で何かを依頼する表現にはさまざまなレベルの表現があります。
実際の例でみていきましょう。
例) Attend the meeting (会議に出席する)
①Attend the meeting. (会議に出席して。)
②Please attend the meeting. (会議に出席してください。)
③Will you attend the meeting? (会議に出席してくれますか?)
④Would you attend the meeting? (会議に出席していただけますか?)
⑤I wonder if you would attend the meeting. (会議に出席していただけたらと思うのですが。)
⑥I was wondering if you would attend the meeting. (会議に出席していただけるとありがたいですが。)
⑦Would you mind if I asked you to attend the meeting? (会議に出席をお願いしても気をわるくされませんか?)
①から⑦になるにつれて丁寧な度合いが増していきます。
④はWillを過去形にすることで丁寧さを増しています。
⑤⑥⑦はそれぞれ婉曲的な表現を使って丁寧さを表現しています。
「Please」は使うシチュエーションを選ぶ
英語の命令文に「Please」をつけると丁寧な文章になると習ったことはありませんか。
実は「~してください」として使われる「Please」は、シチュエーションによって不適切な場合もあります。 例えば企業のマニュアルを英語に翻訳する場合には、よほどのことがない限り使用しません。
取扱説明書の中で日本語では「電源を入れてください」と書いてある部分を訳す場合、「Please turn on」とは言わず、「Turn on」のみで表現します。
「Please」が複数回繰り返されると冗長的でくどい表現になってしまいます。
説明書やマニュアルで避けられるばかりでなく、実は日常会話でも「Please」を多用されることは好まれません。
また、会議などの場での「Please」の多用は横柄な態度にも見られかねず、不快感を与えることもあります。
何度も使うと子どもに向けて説明しているような言い回しに聞こえ、大人に対して使うときには注意が必要な表現です。
より詳しく知りたい方は、日本語と英語の丁寧語に対する認識の違いを説明している記事をご覧ください。
英語で敬語・丁寧語を表現するコツ
英語での丁寧な表現について理解ができたら、実際に表現してみましょう。
表現のコツをつかめば、話し方やメールの文章の印象がガラリと変わります。
直接的な伝え方をしない
直接的な表現を好む英語でも、遠まわしな表現でクッションを入れることで丁寧さを表現することがあります。
遠回しな表現
例えば物を取ってほしいとき、「Will you hand me the document? (その書類とってもらえる?)」というよりも「Would you mind if I asked you to hand me the document? (その書類を取ってとお願いしても気を悪くされないでしょうか?)」のように遠回しな表現が丁寧な印象を与えます。
日本語訳にすると、遠回しすぎて意味がわかりにくいもこともありますが、よく使われる表現として覚えておくことをおすすめします。
ただ、親しい間柄ではあまり使わない表現であるため、関係性によって表現の仕方に注意が必要です。
例)
- I was wondering if you would~. (可能でしたら~していただけますでしょうか?)
- Would you mind if~? (~しても気に障りませんか?)
- It seems to me that~. (私には~のように思われます。)
5W1Hを避ける
学校で習ったような「What’s your name? (名前は何ですか?)」という言い回しは子どもに対して言っているように聞こえる場合があります。
丁寧な表現が必要な場面や、年長者に向かって話す場合には「May I have your name? (お名前をお伺いしてもいいですか?)」という表現にする方が好ましいでしょう。
譲歩の表現
相手にとって不都合なことを伝えるときや、反対意見を述べるときなどは慎重に返答する必要があります。
お断りしないといけない場面でも、直接的に「I cannot do that. 」と取引先に言ってしまえばもう取引をしてもらえないかもしれません。
相手に不都合なことやお断りするときは文頭に譲歩の表現を使ってクッションをはさむのがよいでしょう。
例)
- Unfortunately,~ (残念ですが~)
- I’m afraid that~(申し上げにくいのですが~)
過去形を使う
過去形を使うことで現在形よりもより丁寧に表現することができます。
- Will(~してくれますか)
Will you attend the meeting? (会議に出席してくれますか?)
↓
Would you attend the meeting? (会議に出席していただけますか?)
- I wonder if(~できたらと思う)
I wonder if you would attend the meeting. (会議に出席していただけたらと思うのですが。)
↓
I was wondering if you would attend the meeting. (会議に出席していただけるとありがたいのですが。)
フォーマルな単語を使う
普段使っている単語と同じ意味だけれど、ビジネスシーンなどでよく使われる「フォーマルな単語」が存在します。
単語を入れ替えるだけでビジネスシーンでも堂々と使えるワンランク上の表現になるので使ってみてください。
例)
- ask→inquire (聞く)
- do→execute (実行する)
- thank you→I appreciate your help (感謝する)
- I am sorry→I apologize (謝罪する)
まとめ
英語での敬語にあたる丁寧な表現にはいくつもレベルがあることをお伝えしました。
日本語では丁寧語、尊敬語、謙譲語と細かい一方で決まりがあるのに対し、英語では伝える相手によって丁寧な表現のレベルを合わせていく必要があります。
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翻訳監修
セス ジャレット:Seth Jarrett
カナダ出身。翻訳会社のアイ・ディー・エー株式会社に13年以上在籍。翻訳者のクオリティーチェックから英語のリライトまで幅広く対応。自らパンやスイーツをつくる料理人でもある。